茨城県カーコーティング店 s-detail’s blog

茨城県 自動車ボディコーティング、ボディ磨き、車両美観の施工例

ニッサン エクストレイルT31 ヘッドライトリペア(重施工)

ヘッドライトの劣化に於いてお困りの様子からリペア作業を行わせていただきました。

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T31エクストレイル

 電話での御相談内容から深刻な状況と察しました。それと、6月のリペア受付再開前に一度お電話を頂いており、その際には再開前で大変ご迷惑をお掛けしました。
こちらの車両お客様は6月再開後早々と施工させていただきました。但し、車両からの脱着がありません、条件、制約等が作業や仕上がりにありますのでご容赦ください。

 

車両情報

初年度登録は平成23年、2011年車ですから丁度10年が経過です。ニッサン車に限らずこの当時の車両は劣化が激しい、目立つ車両が多い傾向です。市光工業製となります。傾向や特徴としては製造年式から劣化の多くはHC表面の黄変となります。

一枚目の写真からレンズの変色の度合いが尋常ではないのがお判りかと思います。先に年式と製造と劣化特徴を述べましたが、今回は全く関係がありません。


施工歴(約1年前)というか純正ヘッドライトレンズ表面は一度手が入っています。お客様自身ではなくお知り合いに委託されたようです。

  • 劣化が目立つので一年前に表面を塗装で仕上げている
  • 塗料は不明、スプレーガンによる塗布仕上げ
  • 自動車関連業による作業ではない、スプレーガンを持っている職人さんという事
  • 細かい作業内容は不明、下地、研磨がどの様に?全く不明
  • 当時の作業後はキレイに見えた

というのが、お客様からヒアリングした内容でした。

屋外で撮影した写真をご覧いただき、次の項では実際に屋内で見える状態、そして作業開始となります。

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屋外(太陽光下)で見るヘッドライトの劣化状態

さて、難易度が高いのか?又は施工途中で障害が生じるのか?予測は出来るが実際には作業を行ってみないと、、、、という事です。

研磨作業

劣化状況と注意事項

車両を屋内へ移動、車両全体が特別汚れている訳ではありません、洗車等も無しでこのままマスキング作業へ移ります。その際に照明を当てたり、細部のチェック、注意するべき箇所の見極め等々。

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フードを開けマスキング開始

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レンズの劣化、黄変

お客様には大変失礼ではありますが、黄色を通り越して茶色に近い色味と変化しています。実際にこの様になってしまう原因としては、外的要因からとなりますが、それよりも塗られている不明塗装品が耐えきれなかった事になります。耐えてはいたのですが、耐久性が低かったと推測しても良いでしょう。

症状としては次の様な事も起こっています、

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レンズエッジ部の剥離

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上面部の剥離

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塗面のブツ

ガン塗布によるチリ、埃付着が多く目立つようです。

各症状を書きましたが剥がれや変色は経年によりこの様に起こります。永久品、永久的な施工はありませんし、性能が低下した、消耗したという事になります。今回の施工御依頼は極端な美観の損失、前施工歴から一年の短期間という事からです。塗面のブツ付着には完壁というのはありえませんが、仕上げやリカバリー処理が不足していると言えるかもしれません。

現状を述べているので悪い事ばかりだなぁと思われますが、決してそのような事は御座いません。のちにも述べますが【ここまで傷んでいる事は表面でガード(保護)していた】美観は悪くなってはいたが、良い仕事をされて全うされたという事です。

マスキングと剥離、切削、研磨

フロント廻りをマスキング、おおよそベンチレーターカウルトップまでは覆います。この作業だけでも30分~程度はかかりますので、この時間があれば、簡易作業店などでは既にヘッドライト方側を磨き切っている?のではないでしょうか?

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周辺のマスキング

マスキング中に剥がれてしまっていた部分(赤丸部)の試研磨を行いました。塗膜の密着度、硬度の様子も確かめないといけませんからね。

作業開始は左側(助手席側)ライトになります。

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研磨開始

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研磨開始

最初に劣化している層、塗られている塗料を剥がすイメージです。研磨というよりPC素材まで削り取るので切削とも言えます。
ここからは流れよく進みます(記事の進行上)

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まだ開始から粒度変更なし

この後異変があり、、、、

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研磨紛の異臭


狭い部分、機械が入らない部分により手研磨にすると異臭がします。防護マスク着用でも異臭を感じ取れます。

石油系というか有機溶剤系の腐敗した様な・・・
例外を除けばこの手の塗料に属するものは「第二石油類」に分別されますから、石油系臭はしても間違いではありませんが、少し匂い過ぎる様です。切削による粉末状によれば更に強く感じます。

※当方の物であれば「合成樹脂塗料」の品目、この様な危険物指定品あれば貯蔵取り扱い量が算出した一定の量を超えると届出をしなければなりません。在庫で塗料の指定数量はかなり余裕がありますが、気を付けなくてならないのは第一石油類での算出基準量の関係で他の関連溶剤を多く在庫を持てない事です。

余計な話はさておき、話の流れをスムーズに進めるはずだったのですが、
メインの研磨機以外にも出番がやってきました、またハンドポリッシュでは信濃製の非売品バックパットもかなり有効に作業補助してくれました。

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エアミニサンダー

そして、この様な状態にも躓き 、マイナスドライバーで浮かせてみたり、、、

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塗膜の剥がれ

ついでに右ライト時には、

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塗膜の剥離

状態に左右での違いがあります、膜厚、定着です。作業感覚でのお話しですが剥がしにくい、ペーパー研磨以前の作業を必要としました。金属、鋼板でもないので溶剤は使用できないし・・・
一応言っておきますが、最終的に仕上げられるスキルが無い方は真似をしない方が賢明です。金属へらは見ての通り(恐)

DIYで作業される方は無理な処置は止めて下さい、当店への問い合わせで多い内容、「お風呂の洗剤で磨いておかしくなっってしまった」「自分で紙やすりで磨いて良くならない」「ピカールで擦ったが良くならない」「市販スプレーウレタン2液塗料を吹き付けクラック多数」「耐水ペーパー(黒いやつ)の600番で磨いて艶が無くなった」他、多数

上記のような例は極端な例ですが、当店へ施工依頼時には他店施工歴や自身での施工歴は申告を頂く様お願い致します→研磨歴有無、塗装時の弾きの対策対応の参考にさせて頂いています。稀に嘘をつく方も居られますが、協力的な良心のある方に施工を提供させていただいています。

膜厚に関していえば、お客様には現状の剥がれを見て薄い所もあると御説明したのですが詳細は?
塗布されされているものはムラがあり、塗装被膜としては通常考えられない膜厚がありました(多すぎる厚み、車両塗装クリヤ膜の3~4倍)、そして当方でのメーカー指定規格指定膜厚の2倍以上の値が計測されました。
※レンズ表面自体の計測は出来ませんので剥離後の塗膜破片を数回計測の平均値(計測器は金属表面のみ対応の為) 

参考までに製品としてのヘッドライトハードコート膜は概ね 5μ前後、程度と言われています。製品データは出ませんがある所にはある、それなりの資料が存在する、、、のです。

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ヘッドライト製品資料

因みに当店で計測した平均的な国産普通自動車ヘッドライトレンズ総厚みは約2.5mm。車両により違いもある事かもしれませんが、おおよその車両がこの2.5mm前後となります。また、そのうちの研磨切削可能な許容範囲は○✕△μと言われていますので、適当、無造作に削ると取り返しがつかいない事になります。(○✕△としたのは転載や転用されるので伏せておきます) 因みに当店ではこの数値を超えない研磨を行っています。

話は進みますが、段階を踏んだペーパー研磨終了時です。目消しと言われますね。

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ペーパー研磨終了

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ポリッシャー研磨

ポリッシャーで数回整えると完成です。また、作業工程中に必要であればアブラロン(トヨタ自動車のマニュアル指定品)を使用する事もあります。
注!気に入らない部分があれば前工程に戻ります。人の手(機械は使いますが)と勘(慣れや感触)で行っていますので精密には程遠いのは御理解を下さい。いつも言っている様に新品にはならない、新品の様にはなりません。

そして、研磨作業は終了です。

新品にはならない、新品の様にはなりません、ですが、終了後は画像↓で御確認下さい。

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研磨終了 再生された表面

このままでも良いんじゃないの、という人も居られる位ですがポリカーボネート素材の素の状態です。触っただけでも脆いというか、表面の耐傷性が全くありません。そして耐候性も無いので直ぐに劣化するでしょう。

片側ライトの終了で一旦施工前後の比較をしてみましょう。

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研磨前後の比較

片側ライトの研磨には詳細をお伝えすると、

13:32 研磨開始

この間30分程度の休憩を2回、計1時間程度手を休めている

19:02 研磨終了

実研磨時間4時間30分(マスキング時間はカウントしていない)

(表記の時間は画像に残っている撮影した時間)

以後、もう片方ののライトは22:00位まで頑張りましたが途中で終了しました(苦笑)

※余談ですがこれだけ研磨をしているとメインで使用しているサンダー(県内の簡易施工業者が見ているのでお見せ出来ません)の消耗は激しく、マジックパット(ペーパーを固定)や中間パットはKYOSERAの純正部品を大量在庫を心掛けています。

翌日、残作業の右側ヘッドライトの研磨をヘラでガリガリと併用しながら右と同様に終了となります。

おまけ、↓

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旧塗膜の残骸

脱脂、樹脂専用クリヤ塗装

塗装前の作業工程詳細は、以下の通りです。

  1. 研磨時マスキングの剥離
  2. 車体フロント廻りの洗浄(研磨粉の洗い流し)
  3. 塗装の為の再マスキングと脱脂作業

再マスキングは車両全体からとなります。

脱脂作業

それから脱脂ですがいつも言っている完全なる、確実性を持った内容です。ケミカルクラックを起こし破断損傷を生じてしまった例を多く見ています。その様な事が起こらない方法を取るのは当たり前なのですが、巷には色々な方法例があり、正しくない方法でも運良く何事も無かったりすると、それで良い事になってしまっているのですね。

脱脂のポイント💡

  • 素材にダメージを与えない
  • 塗装前であれば静電除去、防止、抑制は必要

ケミカルクラックに関してですが、例を一つ、劣化大のレンズ表面をリペア後に劣化によるクラックを除去した事とします。これは人間の目による目視確認ですが、経年、劣化の進行自体により、除去したつもりでも目に見えなかったり映らなかった残がレンズ表面にあった場合(深度マイクロ、μの数値論)、ケミカルクラックを起こす危険が大いにあります。(通常何も無くても指定以外の剤によりケミカルクラックは起こる危険がありますが)要は目に見えない劣化があれば、そこに浸透入り込めば一瞬でダメージを受けてしまうという事です。

この様な起こしていけない不測の事態を避ける為、十分な安全性を担保して尚且つ油脂類を一掃させなくてはならないのです。マイカーのDIYの作業でしたら自己責任で終わりでしょうけどね。

因みに当店の脱脂はヘッドライトリペアの各方法、仕上げにコーティング剤、スチーム系施工、塗装でも全て同様に行います。(スチームでは本来は特にどうでも良い)

沢山書きましたが、一台分の施工で作業工程毎に正しい事を繰り返し積み上げる事で良い物が出来ると思っています。

脱脂の件は過去他の記事にも書いていますから参考に。

作業は、

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脱脂中

 樹脂専用クリヤ塗装

ここからは画像少な目となります。

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塗装中

規程の膜厚を目標にて終了。

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塗装直後

塗装後の乾燥に入っています。

特に問題も無ければ順調と一安心ですね。

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強制乾燥

暫く休憩が出来ます。ですが、私はいつもこの段階でお客様への請求書を入力しています。まぁ、完成見込みに目途が付いたという事ですね、問題があり、再作業や可能な手直しがあれば、乾燥後に再度取り掛かりますし、申し訳ありませんがお客様へのお渡し予定は遅延する事になります。時間が無いから終わりというのはありません、しかし、”これ以上良くなりません” ”可能な作業はありません”による終了は致し方ない事となりますのでご理解をお願い致します。

仕上げ作業と完成

劣化状態から研磨、保護の為の樹脂専用クリヤ塗装を施し終了です。

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樹脂専用クリヤ塗装後


最終仕上げとして再研磨の肌調整作業があります。
これ以上ない見事な塗肌でだったとしても。

メーカーさんの作業要項では状態により省略してと指示がありますが、高透明度、平滑化により整える事により更に美観が上がります。過去の記事で肌の凸凹感が判る写真を載せましたが忘れてしまったので、見つけた場合は参考にされては。

簡単ですが最終工程を画像でまとめてみました。

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塗装後の仕上げ工程

ペーパー、ポリッシャー(コンパウンド)の研磨には数段階の作業が入ります。これは状況・状態によりという事になります。

そして、マスキングを外し完成です。塗装前後の研磨粉等により車輌の汚れを感じれば通常軽い洗車、洗い流し作業を行います。

ここまで長い道のりでした、完成後は画像で御確認下さい。

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ヘッドライトリペア完成後

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ヘッドライトリペア完成後

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ヘッドライトリペア完成後

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ヘッドライトリペア施工前後比較

先にも述べましたが以前の施工歴から、【ここまで傷んでいる事は表面で保護していた】元々の素材自体には大きなダメージは無かったようです。以前のハードコート層が表面で守っていたおかげで元々の素材(ポリカーボネート)に取り返しのつかない様なクラックは多くはありませんでした。日産車の施工歴は多くありますが、10年選手の車両では素材を侵しているものが多数あります。

お客様はWEB検索からの御依頼でした。施工歴からの劣化現象、リカバリーをするのにも施工店を探され当店へのお問い合わせからとなりました。御利用を有難うございます。

 

最後に今回の施工作業は脱着無しという事で承りました。その点からエッジ部(レンズ際)の研磨処理が不十分となります。前施工の塗装が一部剥離できないなどの不具合もあります。その為、仕上がり感、施工後の塗装耐久性などに影響があります。

ヘッドライトリペアの各施工法タイプで完璧な施工商品や再劣化しない商品は存在しません。その為、当店の樹脂専用塗装でも耐久性についても全てに於いて保証等も御座いません。但し、手塗りコーティング剤等に比較すると耐久性はあるようです。施工実績、経年観察等で実証はありますが、使用環境等により車輌それぞれに違いは出ます。