茨城県カーコーティング店 s-detail’s blog

茨城県 自動車ボディコーティング、ボディ磨き、車両美観の施工例

ボルボ XC90 ヘッドライトリペア

遠方から御来店頂きましたヘッドライトリペアの御依頼です。車両はボルボXC90で輸入車特有の劣化状態になります。

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ボルボXC90ヘッドライトリペア

ヘッドライトリペアの御依頼でしたが約一か月後に新たな展開となりました。その内容は別記事で新たに書かせていただきます。

 

車両情報と経緯

御相談から当店の施工御依頼条件(※1)などに御協力と御理解を頂き、ヘッドライトをその場で(!)車両から外されました。簡単に言えば外す事によりお客様にもヘッドライトにもメリットがあります。

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取り外されたヘッドライト

劣化状態としては、

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ヘッドライトの劣化状態

前面からの透明度はそれなりに保っていますが(見る角度でその様に見える)、上面のハードコート層、又はレンズ素材そのものまでのダメージが予測できます。劣化の状態の詳細などは後程の作業中の画像でも御紹介します。

車両からの脱着ですがお客様自身でお願いしております(通常は外してからの持ち込み)こちらのボルボは脱着にはバンパーなどの取り外しも無く比較的簡単です。通常、軒下外しなどは推奨致しておりません。又、外してしまった車両については走行不可となります(当然か)
お客様の御都合で一週間の車両お預かりとなりましたが、今回は特別な例と致しました。遠方からとお見積り後に直ぐに車両(ヘッドライト)を預かる事になり、急遽の展開となりました。

※通常はこの様なお預かりなどは行っていません

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ヘッドライトを外された車両 ボルボXC90

車両情報としては初年度登録を見ると2008年(平成20年)ですから、既に13年の経過とダメージを受けています。保管状況などを伺うと屋外でしたか?

参考:輸入車=高硬度の為の研磨で別途割増料金が必要(施工条件-脱着前提)

又、ヘッドライトユニットはValeo社となります。made in FRANCEの定番品ですね。ご存知の様に日本企業も資本、事業鵜提携、傘下に入っている。ですが、輸入車に使用されているヘッドライト(レンズ)には輸入車特有の性質があり、リペアをする上では研磨方法、又は仕上がり感には国産とは違う事となります。そして何よりもリペアする以前の劣化する経緯や症状が異なるのは当然の話です。

※1 施工条件とは車両から外して単体の持ち込みによる施工作業とします(基本)。特例ですが車両に取り付けたまま作業する場合は、ボディ研磨やコーティングなどと同時に車両全体をトータル的に綺麗にしたいなどの場合です(その際も強く取りはずしを要望致します)、またライト形状などにより施工上必ず外さないと出来ない事は多数あります。

研磨作業 (症状の確認と画像あり)

まずは取り外されたヘッドライトの多角度から見てみます。

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正面から

前面の透明度はあるにしても、細かいクラック等のダメージはあります。

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真横から

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上面から

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角度を付けた見え方

という訳で痛々しく見えたりも感じたりします。

じっくり観察を行ったので研磨作業に入りますが、何事にも準備というのがあります。
まずは、洗浄とマスキングでこれだけでも時間を要します。

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ユニット全体の洗浄

上面付属のゴム製カバーを取り外し。

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洗浄

特殊な洗浄剤で溜まっている汚れを落とします。一般の方はあまり変わった物は使用しないのが安全ですね。中性洗剤やカーシャンプーなどであれば無難です。私は専門的に行いっていますので独自というか、今後の施工プロセスに最適な且つ安全安心の方法になります。

又、この時点で仕上げの塗装での見切りポイントやエッジの処理の目安などを複合的に見越しています。見切りのポイントはレンズの何処まで塗るか(ユニットとの接着部まで塗るのか?その手前の段付きまでなのか?) まさかの前面のみはありませんからね。車両に付いた時に隠れてしまう部分まで塗るのですが、各ヘッドライトにより一番最適な部分を見極めなけらばなりません。又、この何処まで塗るのかやエッジの処理には塗装自身の耐久性(注1)に関係しますので重要なポイントです。

御注意!! 
塗料がウレタンだから強度が耐久性が・・・
塗りには下地、足付けが・・・
塗り方、ガン吹きっていっても所詮人の手で行うのですからね。足付けであればその塗料に合った方法です、理解不足によるトラブルは以前から多く聞きます。
塗りは吹き方は勿論ですが、膜厚(やはりその塗料に合わせる)
塗料の定着耐久性を考えるなら、完璧に近い方法は指定されている訳だし。YouTubeで多用な物を見てもダメ(根拠を示さない物はダメです)、従来の自補修方法と同様でもダメ、勝手に解釈一捻りを入れてもダメの根拠なしとなります。
塗料は塗り手には合わせてくれません、塗り手が塗料の最適な所に合わせるべきです。

話は戻りますが、「見切りポイント」「耐久性」「エッジ処理」等々の所から、、、
この様な事から、ヘッドライト脱着にて施工するのがベストと言い切れるわけです。ベスト以上に他に何も別方法は無いですね。一部その時の状況と御相談により、となりますが、レンズが車体から露出する部分のみの施工(脱着無し施工)は、効果を得る事は間違いなく少ないという事です。とはいっても街の簡易施工よりは十分ましかもしれませんが。

今更なんですが、「ヘッドライトリペアはただ磨いて保護の塗り」という単純なものではない・・・のです。
作業上ですね、、、、

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マスキング開始

裏側からバルブソケットのホールやその他、研磨粉、塗装(ミスト)が入り込まないよう細かく確認しながら塞いでいきます。テープ(ピンクの養生)の中には詰め物あり。そして更にこの後、養生シートでの3重(3段階)になります。やりすぎ?ではありませんし、やり過ぎて何か困る事でもお有りでしょうか?だから言ったでしょう?安心安全です。

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レンズ以外のマスキング

最終、↑こんな感じになります。ユニット裏側の養生。

で、ここまでの時間を見ると、例えばGSの施工、量販店の施工であれば作業は既に終了、お客様は支払いを済ませているはずです(笑) キャッシュレス決済であれば尚更です!

続いて研磨作業です。

機械で研磨していきます。

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劣化したレンズ表面を研磨 最初の取り掛かり

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劣化したレンズ表面を研磨 まだ一段階中

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劣化したレンズ表面を研磨 4~5段階中

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劣化したレンズ表面を研磨

↑ 一番劣化が激しい所は近くで見るとこんな感じ。

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機械研磨(サンダー)最終的にはこの感じ

↑ 最終では#2500の目に揃えて終了です。輸入車国産車では若干目の揃え方が違う。次段階のポリッシャー+研磨剤への目消しに最適、最良の繋ぎ方。

ここから、研磨剤へ移行して、

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研磨剤

PCやアクリル樹脂に適合する研磨剤を使用します(画像↑は敢えて見えづらくしています)

で、ここまでかなり簡素に画像の流れで進めて来てます(研磨に際して)
機械や資材は出せませんので、レンズの変化のみですね。
初めて読んだ人は何のことか?となりますので(苦笑)
流れを少々書いてみると、

簡単な言い方で表すと、”劣化したヘッドライトを良くするには?” 

①劣化した部分(表面、以前のハードコート層)を段階を踏んで研磨機と研磨紙で剥離

②粒度を変えながら(目消し)

③ある程度まで行ったら研磨機と研磨剤で何回かで仕上げ

④結果は透明度のある表面(PC素材無垢の状態)・・・というのが研磨の流れです。

詳しくやもっと興味のある方は、他のヘッドライトリペアの記事も参考にされると宜しいかと思います。

そして、研磨後と研磨前の比較です。

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ヘッドライト研磨前後比較

更にもう片方の右ライトも研磨終了。
ポリカーボネート素材の研磨という特性を知っての研磨です。
出来上がりは画像の通り、Valeo社のヘッドライトは基本的に深度○○○○○μ㎡程度までのクラックは比較的容易に切削出来る。そして、今回のヘッドライトでは3ポイント(箇所)に除去出来ない(長さ5㎜程度)の物があり、研磨深度を考慮しながら作業したが不可能と判断されました。

付け加えるとクラックというのは空洞であり応力が働いて亀裂が生じている状態です。(あくまでも簡単に書いています、化学的に書くと判りづらくなる)
厳密に言うとリペアなどで目視でクラックを削除出来たとしても、何らかの刺激で応力が作用すればその後破壊に至ります。後に書く目に見えない進行があれば、それは確実に後々症状が出てしまいます。

クラック以前の”クレーズ”現象というのをご存知でしょうか?
クラックはいきなりクラック=割れ(ワレ)が生じるのではありません。クラックに至るまでの過程があるのです。

クラックとクレーズの詳細は機会があればいつか書いてみます。

※実はこのスペースに書き出したのですがとんでもない長文と分のまとめ方が難しかったのです。ですので一旦削除しました(苦笑)

一般的に車両のヘッドライトでは主に経年劣化でのダメージが大きいと思います。ですが、経年使用中にそのまま時が経つのを待つ人、市販品などで定期的に手をかける人、簡易業者などで中途半端に手をかける人など様々です。クラック除去にも程度と限界がありますので長期保有車であればタイミングは見計らう事は大事ですね。

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研磨終了

上の画像=注目(!!)

これで何か問題があるのであれば、他人任せは止めましょう。ご自身で行うか、新品に交換しましょう(このお客様に言ってるのではない、御理解の上私にお任せいただきましたからね)

要は今現在可能な処置というのがこの作業なのです。

潜在する微量のクラック、研磨痕は当然ある事でしょう、一般的に屋外の環境で目視レベルを基準としての技術としています。

樹脂専用塗装

脱脂

研磨の項でかなり引っ張りましたが、ここからは脱脂作業から塗装作業となります。

ここでは塗装への準備として再度マスキングを行います。

いつも言ってはいますが、脱脂作業は重要です。詳しく書いている記事も過去の施工車両でありますのでここでは書きません。
但し、重要な事があります。
ポリカーボネート素材の脱脂とは溶剤をアーチャンスプレーや有機溶剤スプレーでぶっかけたりするような脱脂はこの世の中には存在しません。

ポリカーボネート素材はエンジニアプラスチック(エンプラ)の種類に分類されます(合成樹脂)

という事は耐熱性には優れている、が有機溶剤により膨潤、溶解しやすいという性質を持っています。

依って素材に適用されない物の使用はありえません、簡単に言えばリペア作業なのに壊してしまう可能性もあります。自動車メーカーやケミカルメーカー、リペアに使用する材料の企業のマニュアルでは当り前の事なのですが、それ以外の一般に出回っている施工法には多種多様となっています(その様な物を見かけるとプっ!(笑)と吹き出す事もあり)

因み後述するクラックやクレーズ(内部に潜む、人間の目視出来ない)等に必ずしも悪影響を与えます。この状態で既に壊している、その場では何ともないが数日、数週間、数ヶ月後にクラックが表面に表れる事もあるのです。

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樹脂の脱脂

正しい方法で脱脂を行うと、精度の良い脱脂になります。指触で感じる樹脂の様子は全く違う事になります。

塗装

いよいよ塗装です、その他塗装への準備もある訳で塗料の調合、エアラインの接続(ガン用にフィルターや減圧済みを別途用意している)、何かと手間がかかるのですね。今回は車両自体にはマスキングが無いのでそれだけでも大変助かります。

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塗装直前のヘッドライト

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ヘッドライトへ塗装中

↑ グローブをするのを忘れました(汗)

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塗装後の強制乾燥

塗装と乾燥、そして終了と流れよく写真で確認して下さい。

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最終仕上げ前のヘッドライト

最終仕上げ

塗面(ヘッドライトレンズ表面)の状況から最終仕上げとして肌調整を行います。

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肌の平滑化

つづいて、全面研磨

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最終ポリッシャーで仕上げ

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塗装肌の最終仕上げ

これで作業は終了です。

因みに塗装後のマスキング外しの指定では強制乾燥後の”塗料が温かいうちに剥がす”とご丁寧に書かれています。指定の理由は塗装が硬化する前に剥がす場合と理由は見切りなどから剥がれてしまう場合があるから。
私はその時の作業形態により、後の最終仕上げまで剥がさない場合もあります。それは、見切りがシビアではなく塗装剥がれの恐れが無い場合などです。
今回はバルブソケットのホールなども含めてマスキングしていますので、埃等が入らない様になるべく全作業終了まで触らないという理由です。

完全マニュアル通りで熟してしまうと、決まった事しか出来ない、非効率なんて事もあり。仕上がりにも直結する事なので応用も必要です。

完成とお渡し

お客様の御都合で約一週間お預かりしていた車両(リペアの実作業は数日)

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ヘッドライトを外された車両 ボルボXC90

今回は特別に承りましたが、通常はお預かり出来るかは判りません。他の車両の入庫や作業での保管場所確保にも都合がありますので事前に綿密な打ち合わせを必要とします。

そして、完成品は

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リペアされたヘッドライト

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リペアされたヘッドライト

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リペアされたヘッドライト

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リペアされたヘッドライト

車両に取り付けていただき完成です。

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リペア後に車両取り付け

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リペア後に車両取り付け

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リペア後に車両取り付け

終了です!

美観の復活、画像で御確認下さい。

ですが、欠点や不明な点は多数あります。
それは、新品や新品の様には全くなりません。
新品とリペア品は全く異なります。
次に何年持つ、持たないなどの耐久性は誰にもわかりません。
各々の個体の使用環境条件により様々です。
また、その持つ持たないの基準が曖昧です、それに対して一律で数字(何年)と答えるのも無理な話。

常識的判断を持ち合わせておられるお客様に御利用を頂いています。

今回のヘッドライトは素材(ダメージの度合い)が良かったので、復元された時には画像の様な結果となります。

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リペア後のヘッドライト

お客様にも喜んでいただいたと思っています。
また、来店された際には差し入れを頂きまして、お心遣いを有難うござました。

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現在(2021年7月~)ヘッドライトリペアは実質行っておりません。

車体全体(一台の仕上げ,ヘッドライト施工を含むボディ研磨、コーティング)等による場合は御相談、予約状況を鑑みて検討させていただきます。

その様な施工御依頼の場合、現在の御予約状況(2021年9月)から数か月待ち(通常で2カ月以上)となります。